IBMの量子化学ベンチマークに重大な疑惑?鉄硫黄クラスター解析におけるスピン値の怪
Spin audit of SQD/QSCI quantum-chemistry benchmarks on iron–sulfur clusters
Spin audit of SQD/QSCI quantum-chemistry benchmarks on iron–sulfur clusters
投稿者本人です。本件を追っていない方のために背景を説明します。IBMの鉄硫黄クラスターに関するSQDの結果(Sci. Adv. 2025)は、「量子コンピュータが化学計算に実用的なレベルへ到達した」とする看板的な成果ですが、これに対し「量子サンプリングは同コストの古典的なSelected-CIに勝っていない」という批判(arXiv:2501.07231)が公開されています。この議論は現在も続いています。双方の議論はこれまでエネルギー値のみに焦点を当ててきましたが、肝心の計算結果が物理的にどの電子状態に収束しているのかは測定されていませんでした。そこで私が測定したところ、対象とする一重項状態(期待値⟨S²⟩ = 0)に対し、実際には⟨S²⟩が4.7から7.0という値を示しました。どのような初期値から始めても同じ状態に収束し、収束時の誤差はスピン状態のエネルギー差と同程度であり、まさにこれが議論の核心です。IBMはこれに対する緩和策を提供していますが、標準のドライバや診断関数を使用して実行しても、部分空間サイズを48,600から194,481へと4倍に拡大するだけで、エネルギーの変化はわずか数ナノハートリーです。これでは一重項を表現できるようになっただけで、実際には一重項状態を生成できていません。昨日、GitHubのリポジトリ(https://github.com/Qiskit/qiskit-addon-sqd/issues/337 )にこの問題を報告しましたが、管理者は「このフラグはαCI文字列をβCI文字列として扱うことで部分空間を拡張するものだ」と回答し、即座にクローズしました。つまり、これは空間の決定に関する操作であり、目的のスピン状態が得られるかについては無関係です。次に、IBMの公開データに含まれる実機測定結果を自前のパイプラインで解析しました。[2Fe-2S]の結果は⟨S²⟩が低く出ても参照値から248 mHaも乖離し、[4Fe-4S]は純粋な三重項(S=1)に収束しており、参照値から1,438 mHaもズレています。さらに、IBMの公開データにある「一様乱数による制御結果」の方が、公開された[2Fe-2S]のハードウェアサンプルよりも性能が良いという事実も確認しました。AIの活用についても触れておきます。Claudeは私の監督下で約72時間かけてこの監査を行いました。特筆すべきは、AIが自身の作業の中に5つの欠陥を自ら発見し、修正した点です。結果として、量子有利性を強く示唆していた自らの結論を、スピンセクターのアーティファクトであると判明した時点で撤回しました。詳細はプレプリント(https://doi.org/10.26434/chemrxiv.15006382/v1 )およびアーカイブ内のAUDIT_TRAIL.mdを参照してください。もしこの主張を否定したいのであれば、⟨S²⟩ < 1を満たす正しい基底状態を提示するか、同等の決定論的コストでHCIやCIPSIを上回る結果を示してください。私は自分の誤りも含めて検証結果を公開する準備があります。